オールド楽器、現行楽器、資料楽器、アンティーク楽器など主催者がこれまでに集めた楽器を是非ご覧下さい
マンドリン編
三大銘器メーカー
NEW!
13.ルイジ・エンベルガー(Luigh Embergher )
Model No.6~7?
Artistic mandolin

1913年制作
 
エンベルガー マンドリンについてはこのホームページを立ち上げた初期の頃より、マンドリン三大銘器の最高峰として紹介してきたましたが、今やその地位は世界のマンドリン界でもすっかり定着し、さらに海外では立派なエンベルガーマンドリンの本も出版され、色々なホームページなどでも詳しくその研究内容が紹介されて今や超人気のオールド楽器です。

 すでにエンベルガーの本家は途絶えてしまい、さらにその工房から独立した弟子たちも死に絶えてしまいました。しかしながら近年になってエンベルガーの復刻に熱心に取り組み、エンベルガーモデルを復活させているマンドリン制作家も現れており、いかにこの楽器が人気があり評価においても最高峰にあるかがわかります。
 本家のルイジ・エンベルガーの作品になるとその人気の高さから、日本ではほとんどハイグレードの楽器が入手できない状態で、時折ネットオークションなどに出てくるのを根気よく探すしかありません。ただオークションに登場するのはグレードの低いタイプのものに限られているようでです。

また、その弟子チェローネやパスクアーレの制作したエンベルガーですらなかなか手に入れることが出来なくなってきています。

 今回2021年末、久々に楽器商から、良いグレードのエンベルガーが入手できたので買わないかと連絡が入り、即購入を決めたのがこのエンベルガーですが、到着して改めてみると予想以上に素晴らしいグレードのエンベルガーでした。
 
   
 ボディー後部はこれまでネット上で掲載されているモデルにはなかった、渦巻き状の木象嵌と呼ばれる埋木による装飾が施されこの楽器のグレードの高さを象徴していますが、ただ残念なことにテールピースの弦のカバー、いわゆるアームカバーの金属部品がオリジナルとは思えないアルミ製のちゃちな出来で,何らかの理由で紛失したかあるいは損傷して取り替えられたのか、本来のエンベルガーについているテールピースでなく、おせいじにもいい仕事とはいえず、素人が手作りでにわかにこしらえたような粗末な物がついています。
いずれ現代版エンベルガーなど作っている工房に頼んで入手するしかないかと思います。
    ボディーは左右両サイドから後部にかけて見事な木象嵌と呼ばれる種類や色の違った木の板を切り抜いて埋め込み、模様を作る技法で装飾が施され、下段記述の(出版資料本 Ralf Leenen&Barry Pratt 著「The Embergher Mandolin 」P84~86)にある立派な彫り物のあるボディーよりは簡素であるが、これはこれで見事な手の込んだ装飾がなされています。
 
この楽器の大きな特徴はやはりこのネックの形状に有ります。これまで数多くのエンベルガーの写真、資料、出版本などを見てきましたがネックのマシンヘッド(ペグと呼ばれる弦巻を収める部分)が彫り込み式になっており、貫通していないのです。
この形状はおそらくエンベルガーの作品の中でも大発見かもしれません。

クラシコAタイプは弦巻がナポリ式(巻き取り部分が楽器の軸方向に垂直になっている)ですが弦巻を収めるため裏蓋がしてありネジで止められていますが、この楽器は従来通りローマ式(巻き取り部分が水平になっている、ギターと同じ方法)弦巻でヘッド部分を彫り込んでいる違いがあります。 
 
 
 
 
販売当時のカタログなど掲載された最近の研究を読むとエンベルガーマンドリンはおおよそ下記11種のグレードに分類されています。

・A,B : Mandolini da studio マンドリンを学ぶ学生のための楽器、

・No1~No4 : Mandolin per Orchestra 一般のマンドリンオーケストラメンバーが使う普及品~高級品の4種類

・No5,No5bis : Mandolin pour concertiste et soliste コンサートアーティストとソリストのための楽器

・No6,7 : Mandolino artistico 他のモデルよりも装飾された芸術家向けのエリート楽器、ボディ側面も立派な彫り物が施されている
 
・No8 : Mandolino artistico No7よりもさらにより豪華な楽器で、象牙とマザー・オブ・パールが象嵌され、ボディはべっ甲で覆われ、楽器というより工芸品に近く博物館に展示されてもおかしくなグレードの楽器
  

エンベルガーのピックガードの装飾はNo6,7,8(一部のNo4,5もドラゴン装飾あり)にはたいてい施されており、おなじみの端が巻き込んだ模様の黒いべっ甲の下地に火を噴くドラゴンがあまりに有名ですが、特にこのドラゴンの図柄らが時代や作者によって龍の顔や形まで様々有り、見る人弾く人を楽しませてくれます。

それ以外にも特に高級グレードには例外的に天使などを彫り込んだ楽器もあります。
この楽器もその例外ですが羽の生えた天使が竪琴を弾いているこのデザインの装飾は初めて見るエンベルガーの装飾です。

ドラゴンモデルに比べ大変細かいところまで手が込んでおり、またその装飾面積も大きくこの図柄の装飾は主にこれまでに見てきたNo7クラスに施されてきた楽器だと思います
しかも形がNo7クラスの楽器(Ralf Leenen&Barry Pratt TheEmbergher Mandolin P84~86)
の装飾のべっ甲下地の大きさ形がほぼ同じ形ですがこれと比較するとボディ横、後ろの装飾は彫り物でなく、木象嵌の装飾がはられてています。

ただこの楽器は当時のカタログにも載っていないようでグレードがいまいちわかりませんが、装飾その他の作りの仕上げを考えるとNo6~7ぐらいのグレードではないかと思います
 
  ラベルはエンベルガーおなじみのラベル、女神に竪琴のマーク(1913-1962)ではなくその前に使用されていた受賞メダルが印刷された、Via Belsiana7の販売店住所ラベルが貼られています。制作年も1912年とあるのでラベルと年数は正しく一致します。
エンベルガーのラベル記載の住所は年代によって販売店の住所が替わり判明している分で下記の通りです。

1897-98 Via Tomacelli, N. 147; 1898-c.1902 Via Dogali N. 10-12; c.1903-1906 Via Leccosa N. 2; 1906-1915 Via Delle Carrozze N. 19; 1915-1960 Via Belsiana N. 7
などがあります.

そのうちこのBelsianaN.7
はエンベルガーが途絶える最後の1960年頃まで楽器を販売していた住所です
 
裏面から見てもエンベルガー独特のカーブを持った素晴らしい曲線です。特にこの楽器特有のネックの裏側の仕上げの曲線はこの楽器の色気さえ感じる魅力です。 
 
 今回この最高クラスに近いルイジ・エンベルガーを手に入れたことで三大銘器の最高峰に近い楽器がそろえる
ことが出来て感無量です。
興味ある方はこのホームページに詳しく紹介していますぜひご覧ください
・カラーチェ、クラシコA(先代Giuseppe 作の戦前の制作楽器)、今のGiuseppeのおじいさんのクラシコA
・ガエタノ ヴィナーチャ 女神(人形?)ヘッドのついた ブレヴェタット(特許)マンドリン