1935年製 Raffaele Calace 1世のクラシコA 


〔オールドのクラシコAとは〕

戦前のカラーチェのクラシコAといえば名古屋の中野二郎先生が愛用していた楽器を、
現在プロで活躍中の石村隆行氏が譲り受け、
石村氏の各地の演奏会でこの銘器が演奏されているのがあまりにも有名です

石村氏の演奏会を聴きになった方もたくさんおられるかと思いますが、
記憶に新しいのでは98年に来日したウーゴ・オルランディ氏との共演で
オルランディ氏の持つ、
特注ローマスタイルクラシコA(Raffaele2世の楽器)と
この石村氏の戦前のクラシコAが同じ舞台で2重奏で競演、演奏されました。

素晴らしい音色、響き、音のとおりをもったマンドリン最高の銘器です。
この楽器が先々代のRaffaele1世(現在楽器を造ってるRafaele2世のおじいさん)の
制作した戦前のクラシコです。

クラシコAはこのRaffaele1世によって考案され造られたカラーチェ・マンドリン最高の楽器で、
(いつ頃考案されたかは今後研究してみます)、作られて1世紀近く経っても
ほとんどかたちの変化はなく
当時から完璧に完成の域に達していた楽器といえます。

カラーチェのオールドはこれまでにいろいろ出回ってます、しかしながらたくさんある
オールドの中でも、戦前に造られたクラシコAとなると、
造られた絶対量が今と違って極めて少なく、滅多に出るオールドではありません
現在でこそ少しがんばれば、手の届く範囲の楽器ですが、
当時は相当高価な楽器だったことに間違い有りません
そんな希少価値と言うか、探してもまず手に入れるのは至難の業と思われていた
オールドのクラシコAが偶然入手できました。

修理前の姿では有りますが、親子3代にわたるこのクラシコの
比較、変貌振りを是非ご覧下さい。


その後「弦楽器のイグチ」井口氏よりクラシコAの
作られたと思われる時期について詳しい情報を頂きました

この場をお借りしまして情報提供を厚く御礼申し上げます

---抜粋---
カラーチェクラシコAですが、いつから作ったのか詳しい年代は私も分かりません。
ただ、1900年を境にしてマンドリン全般的にその形に変化が見られます。
つまり1890年代までは比較的小ぶりの楽器が多く(ヴィナッチアもそうです)
やや音量的にボリュームの無い楽器が多かったですね。
1900年以降は音の遠達性や圧倒的な音量を重視している傾向にあります。
そもそもクラシコタイプが何故出来たかというのはその音量をもっと出したいがためです。
曲が増えて他の楽器と合わせたときに(特にピアノ)従来のマンドリンでは
絶対的音量においてに聴き劣りがしていました。
それを克服する意味合いが多分にあったと聞いております。
従いまして、作られた年代と致しましては1900年~1910頃年からだと思います。
日本においては大正末期から昭和初期に東京にありました十字屋楽器店が
輸入元となってカタログを作っておりました。
当時のクラシコAは今で言いますと高級車(最高級のベンツあたりですね)を
1台買うくらいの値段がしておりました。
ですから買える人はほんの一握りだったんですね。
現在オールドのクラシコAを目にしないのもうなずけます。



Raffaele 1世の娘 Maria Calace のもつ
クラシコAの写真はあまりにも有名です。

(Maria Calace1896~1967:Raffaele 1世の長女で数々の演奏もレコードに残してる)


貴重なオールドが手に入りましたので修理前ですが、
親子孫3代にわたるクラシコの比較を掲載してみました


1935年製 Raffaele Calace 1世のラベル
Rafaele1世といえば1934年11月に死去しているが、その翌年にできあがった楽器であることが推測できる
厳密に言えばその息子Giuseppeの作品と呼ばねばならないがラベルにはRaffaeleのマークがはっきりかかれている
初期に使われていた有名なRaffaele1世写真入りのマークはこの時代に姿を消している

しかしながら、時期から見てRaffaeleからの流れを汲むベテランの職人によって造られたことに間違いなく、
Rafaeleの死去する前から手がけたとも考えられ、先代の生前中から造り始めた楽器なので、
敬意を払って先代のラベルを使っているのか、今となっては推測の域を出ない。

ラベル中央に斜めにうっすら見えるサインがGiuseppeのサインと思われる

↓写真下:1965年製Giuseppe(1968年死去)
晩年最後の頃の手書きのサイン
Giuseppeは印刷ラベルを使用しなかったものと思われる


写真左:1999年製クラシコAスペシャル
 中央:1935年製クラシコA
   右:1965年製クラシコA


Raffaele1世の頃はネックに向けてのリブの絞り方に特徴があることが判る
写真ではわかりにくいが、ネックの竿とマシンヘッドの角度にも差があることが判るが
クラシコAspになってからボディー裏の絞り込がやや丸みが帯びてきている

マシンヘッド裏の装飾にも大きな違いがあり、先が現在の楽器に比べて細く絞ってある


マシンヘッドの渦巻きの仕上がりも時代によって、
職人の差か、かなり違っている
Raffaele2世
Raffaele1世
Giuseppe

残念ながらマシン(弦巻き)が長年の使用に耐えずオリジナルのものと違って交換されている、
ピックガードも経年に耐えずひび割れて一部プラスティックで補修してあるが、
この辺からの復元も考慮に入れ修理屋さんとの打ち合わせになると思われます


アームガードはこの時代には黒檀を使ってます。
Giuseppe
Raffaele1世
Raffaele2世

 オールド楽器、現行楽器、資料楽器、アンティーク楽器など主催者がこれまでに集めた楽器を是非ご覧下さい
マンドリン編
三大銘器メーカー
 5.ラファエレ カラーチェ Ⅰ(Raffaele Calace 1゚)
 [1863.12.29~1934.11.14]
1935年制作クラシコA