Gibson Mando-Bass

偶然アメリカの方からGibson社のMando-Bassを買わないかと連絡が入り、写真で見る限り程度も保存状態も良好で、値段も手頃でしたので早速購入しました。売り主は1920年代はじめの作品だろうとのことです
ギブソンがMando-bassを作っていたというのは、イタリアのイルプレットロの文献から知っていましたが、どのような楽器なのか、見たこともなく、
ネット上に小さな資料写真が載ってるぐらいで、ほとんど全貌のわからない幻のマンドリン低音楽器でした。

作られた本数はわかりませんが、楽器からしてそれほど多く作られる楽器ではありません。
おそらく2度と出てこない、貴重な楽器であることに間違いありません。

また過去に日本に輸入されて、どこかの団体が使っているというのも聞いたことがないので、日本に初めて入ってきた楽器なのかもしれません。
(我々のクラシカルマンドリンの世界の情報しかわかりません。もしかすると、どこか日本のブルーグラスの団体で使ってるかもしれません。ご存じの方はぜひお知らせください)


このような低音楽器に需要があり、作られるということは、かってアメリカもヨーロッパ、日本と並ぶマンドリン合奏の盛んな国であったことが伺いとれます。
当然、アメリカにおけるマンドリン合奏団の形態が変わってしまい、フラットマンドリンがブルーグラスで使われる様になると、マンドリン族のマンドリンオーケストラだけの合奏というものが姿を消し、従ってマンドリンの低音楽器そのものの必要性もなくなってしまったため、もうGibson社では生産されてません。

今回日本に入ってきたことでまたこの楽器に息が吹き込まれ、マンドリン合奏団で使うようになるということは、極めて意義深いことで、貴重なマンドリン系低音楽器になることに間違いありません。

ネット上で中古楽器店のリストをよく見てますが、ギブソンのオクターブ・マンドリン(マンドラ・テノール)、マンドラ(マンドラ・コントラルト)、マンドセロ、迄は載ってますがこのマンドバスはまず見たことがありません。まず出ない楽器とおもっておりました。

写真では少しわかりにくいが、表面板、裏板もゆるい凹凸がつけてあり、しかも楽器の縁にいくにつれて、凹面がまた凸面に変わりボディの外側で跳ね上がっていると言った複雑なカーブで仕上げている。
そのカーブが何とも言えない美しい仕上がりになっている。
おそらくギブソン愛好家なら涙を流したいほどの美しい仕上がりとなっている。
楽器のレベルからすれば仕上げといい、材質、構造といい、世界最高クラスに入るものと思われる。
さすがは世界のギブソンである、王者の貫禄にふさわしい低音楽器である


ギブソンといえばアメリカを代表するギターメーカーですが、元々ギブソン・マンドリン・ギター・マニュファクチュアリング・カンパニーという会社名でスタートしたメーカーです。
アメリカでのマンドリンの歴史は他のフラットマンドリン系のホームページに詳しく掲載されてますので、興味ある方はそちらをごらんになるのもおもしろいかと思います・
元々イタリアのラウンドマンドリンの模倣から始まり、このギブソン、マーチンを中心にしたフラットマンドリンの世界を確立したのが大きな流れです。
今ではマンドリンといえばフラットマンドリンを指し、ラウンドはボールバック、ポテトバッグなどと称して区別してます。


よく見ると表面板は3枚の板を組み合わせてある
また特徴ある弦の張り方は弦の張力にしっかり耐えるような作りになっている



右が現在使っている、Gelas(ジェラ)のMando-bass フランス製 弦長はギブソンより長いのがわかります
左が今回入手したGibson のMando-bass アメリカ製 ボディーはジェラよりやや一回り大きい感じ
真ん中のマンドリン(ジェンナロ・ヴィナーチャ1897年制作)と比べれば大きさがおわかりいただけると思います。2本のMando-bassを比較した姿は圧巻です


ボディー下にあるテイルピース

マシンヘッド表と裏部分

ギブソンの保証ラベルは貫禄ものです。歴史と伝統の風格です


Allesandoro Vizzari 主幹の
イタリアのイル・プレットロ誌(Il Plettoro)
の1913年-8号No12の
文献に掲載された GIBSONのMando-bass

表紙に Un Originale Mandolone Americano と題されて、
アメリカのマンドローネとして Mando-bass との名前で紹介されてます。

(Da The Cadenza)と書いてあるのでアメリカのマンドリン研究雑誌「カデンツァ」の引用かと思われる

イタリアのオルジナル楽譜をみてもこの楽器のパートは見いだせませんので、
マンドバスはフランス、アメリカ独自に使われた楽器なのかもしれません。
また、この記事の楽器マンドバスはアメリカ独自に発達した楽器とも思われます。


各糸巻き部分には調弦方法の記号で低音からE-A-D-Gと
真ちゅうの巻き取り頭部分に刻まれている

マンドバスの調弦はマンドローネとは異なりベースと同じです
低音から  Mandolone:A(La), D(Re), G(So), C(Do)
        Mandobass:E(Mi), A(La), D(Re), G(So)


販売価格$150.00の載っている、当時の詳細なカタログ、女性に比べて見るとその大きさがわかる
当時(約80年ぐらい前)の150ドルは今のどれぐらいになるのでしょうか?

 オールド楽器、現行楽器、資料楽器、アンティーク楽器など主催者がこれまでに集めた楽器を是非ご覧下さい
セロ・リュートモデルノ(リュートカンタービレ)
ローネ(高調)・ローネ(低調)・マンドバス

  Mandobass(american-Mandolone )
 2.ギブソン (Gibson) 
manndobass
  [C.1920 ? Americana]
  推定1920年前半頃制作