終わりに 我が国におけるクラシカルマンドリン

我が国おけるクラシカルマンドリン


我が国おいてイタリアからクラシカルマンドリン音楽が伝えられたのは、1894年(明治27年)四竈訥治(しかまとつじ)がイギリス人にマンドリンを贈られ演奏したのが最初といわれております。
この楽器がその後広く大衆に知れ渡ることになったのは皮肉にも日本独自の民族音楽ともいうべき歌謡曲というヨーロッパにはない特異な音楽分野の世界に紹介され、ほとんどの日本人に知れわたることとなりました。
古賀政男とマンドリン    このマンドリンを多くの国民に知らしめた分野で、最も功績のあった作曲家は国民栄誉賞にも輝いた、誰もが知っている歌謡曲作曲の大物、古賀政男をという作曲家ですが、残念ながらこの作曲者の名前はクラシカルマンドリンの世界ではまず出てくることは皆無で、マンドリンオリジナル曲も何曲かは作曲していると聞いたことがありますが、楽譜すら入手する方法がわかりません。(歌謡曲の楽譜ではありません)またこの中野譜庫にも作曲者名すらありません。
 今や歌謡曲の演歌と言えばこのマンドリン伴奏がなくてはならない存在になってしまいましたが、しかしながらこのマンドリンを広く知らしめた功績は決して喜ばしいものではなく、かえって一般大衆にマンドリン音楽という誤解を招くことになり、以来今日に至るまでクラシカルマンドリン音楽というジャンルが、我が国ではマイナーな裏の音楽の世界を歩み続けてきたこととなってしまいました。
 東京ラプソディーという曲  そんな中にあって古くからクラシカルマンドリン音楽をやってる方は周知の事実ですが
Ricard Casado 作曲「Fleur d'Spana」(スペインの花)という曲が1922年1月15日にフランスのL'Estudiantina誌から出版されたましたが、この曲の主な旋律が古賀政男氏が1936年(昭和11年)に発表した「東京ラプソディー」という曲とほとんどの旋律が一緒で、決して偶然や参考したとはいえない、一部の旋律を少し書き直している曲であることがわかります。

 当時売れっ子の新進作曲家であった古賀政男氏があちこちから仕事が舞い込み、新曲作成に追われて行き詰まって、苦し紛れにフランスのマンドリンの出版社L’Estudiantinaの出版曲から借用したのか、それとも単なるおふざけのパロディーの果てか、あるいはもっと野心を持ってマンドリンオリジナル曲の可能性を歌謡曲に求めたのか、故人となっては判明しません。
当時はまだ曲に対する著作権という概念が、日本には根付いてない時代でもあって、こういうことが許されたのかもしれません。

このマンドリンオリジナルの「スペインの花」がこんな風に変えられて、しかも古賀政男作曲というレッテルまで貼ってある事実は我々クラシカルマンドリンを愛するものが、どこかの時点で真実を公表し、改めるよう日本の音楽関係に訴えねばならないと思います。

なお、この事実は早くから中野先生も指摘されてきて、中野譜庫の原版楽譜にも先生の手書きでこの事実を付け加えられています。

ちなみにこの曲のリズム、テンポはラプソディー(狂詩曲、狂想曲)ではなく原曲「スペイン」の楽譜に書かれているように「パソ・ドブレ」(闘牛をイメージしたダンス曲)である。
しかも「東京ラプソディー」で演奏されているリズムテンポもラプソディーではなくパソ・ドブレであることからして原曲「スペインの花」に対して忠実でオリジナルを損なうことなく、敬意を払うことにより原曲の持ち味の良さをそのまま流用していることがわかる。


追記:この掲載を初めて一時期メロディーそのものが、オーストリアの有名な行進曲「O, du mein Österreich, an Austrian military march. Composed by Franz Von Suppè」
O Du Mein Österreich

○BOKU Blaskapelle - O Du mein Österreich - YouTube
に似ている(これはちょっと無理があるような気もしますが・・・)、ヨーロッパの国の古い民謡によく似た曲があるなどの掲載がでて、スペインの花がそれをモチーフにして作ってるのでは?などと、従って東京ラプソディーはパクリや流用には当たらない等の掲載が一時期ありました。よく似た旋律の曲など探せば世界中探せば数多(あまた)とあるので、論じることすら無意味ではないかと思われますが・・・・・

 これらの指摘意見はこのスペインの花の旋律が何かの曲に似ているとかが論点で、楽譜の流れを見て論じているのではなく、楽譜を読まず、あるいは読めない方のこじつけに近い論法で、楽譜を読める方ならイントロからメロディーの流れほとんどが一部の付け足しを行って作られていることが一目瞭然です。そんなわけでYouTubeにもたくさんのスペインの花の演奏の投稿して頂き、増えだしているのはこの曲を採り上げてくれてきたマンドリン団体が、真剣にこのことを考えていただいている結果か思います。

それともう1点仮にスペインの花を知らずして、欧州の民謡や日本で聞いたことのない行進曲国家を参考に作曲したのであれば、なぜ最初からメロディーを歌詞名の通りラプソディー(狂詩曲)風に歌わなかったのか?
スペインの花の指定してある「パソドブレ」で歌っているのは、原曲を既に知っていて、これを尊重していて、作り直しをしているとしか考えざるをえないのである。しかも、なぜかラプソディーと称するこの曲に、後にこの曲についてはFoxtrot(ダンスのリズムで楽曲には使わない)で歌えとまで指示されている。


 最後にこれは状況的な面からしか判断できないが、1936年(昭和11年)のこの当時ネットも何もない、YouTubeも聞けない環境下で、オーストリアの有名な行進曲なり欧州の古い民謡曲なりをはたして、当時のプロの音楽家であっても、聞くことや知ることが出来る環境下にあったかというと、これは限りなくゼロに近いと思われます。

 当時の明治大のマンドリンクラブと言えばプログラムの記録によれば古賀政男氏自身も超難曲「幻想的狂想曲」(N.ロマーノ)を独奏するなどの活動記録が見られ、この曲は奏者泣かせのかなりの難曲ですから、かなりの高度な曲を弾きこなしていたと思われ、それなりの高いレベルの奏者であったことは事実のようです。
 したがってマンドリンに対する研究も現在の部活動方針とは異なり、相当高度なクラシカルマンドリンのオリジナル曲を、積極的に取り入れていたものと思われます。当然のことながらこの当時最先端であり、海外のマンドリン研究紙を代表する雑誌としてイタリアのIl plettro(イルプ・レットロ誌),Il mandolino(イル・マンドリーノ誌)、そしてこの問題のフランスのL'Estudiantina(ル・エステュディアンティナ誌)など、日本にも専門商社を通じたくさん輸入されていた事実からして、入手できるあるいは目にすることの出来る立場に、限りなく近い位置にいたと考えても不自然さは無いと思われます。

今後は日本マンドリン連盟からもJASRACにも東京ラプソディの作曲者の覧に原曲の作曲者、曲名の表示をRicard Casado 作曲「Fleur d'Spana」(スペインの花)の追記をしていただくよう働きかけていただきたいものです。
 原曲 オリジナル楽譜
「スペインの花」
(中野譜庫より)
● JPEG file1

● JPEG file2

● JPEG file3

● pdf file
 ネットで東京ラプソディーについて調べてみると興味深い掲載内容がヒットします 

菊池清麿・著『評伝古賀政男 青春よ永遠に』(2004年アテネ書房刊)参照
という本に書かれている内容は、はっきり「ぱくりである」とは書かなくともそれに近い指摘されてる方もおられるようです。興味のある方は購入してみてください
リンク先より一部コピーさせていただきました
「《東京ラプソディー》は、マンドリン合奏曲・《スペインの花》(リカルド・カサド作曲)と酷似している箇所がある。というよりは、前奏・歌の導入部分、転調後の八小節旋律までほぼ同じそれなのである。《東京ラプソディー》は古賀政男の楽想によって出来上がったというよりは、《スペインの花》からの抜粋によって創作されたという見方が正しいといえる。業界用語に「パクリ」という言葉がある。そのような行為は許されるべきものではないが、秀逸な作品を創作するためには、他の楽曲のエッセンスを借用することがしばしばある。そのような行為は、ポピュラー音楽の発展を支える基盤となっていた。(現在掲載無し)
 ネットで「 スペインの花 マンドリン」と入力するとYouTubeでかなりのマンドリン団体がこの曲と取り上げており演奏を聴くことができます。 スペインの花 香里マンドリンアンサンブル - YouTube

スペインの花、宇部マンドリーノ

スペインの花 カサド アンコールとして OST46回定演 - YouTube

3-1. パソ・ドブレ「スペインの花」(1922) 演奏 : コンソルテ - YouTube

スペインの花 マンドリンアンサンブルおとのわ 2023年サマーコンサート - YouTube

スペインの花 - YouTube

スペインの花 R. Casado 作曲 川越MC 25回定期演奏会 - YouTube

予告動画 : スペインの花

ふれあいコンサート「スペインの花」Fleur d'espaňa

スペインの花

北の杜マンドリンコンサート2011・合同演奏アンコール・スペインの花 - YouTube

スペインの花  正面カメラ - YouTube

https://www.youtube.com/watch?v=3d31_x-zWsU