はじめに: C.A.Bracco フルネームについての論争とは 
マンドリン音楽に興味のある方、マンドリン合奏を経験したことのある方なら一度は聞いたことがある、あるいは演奏したことがある、いや演奏しておかなければならないマンドリン合奏曲の至宝の名曲の中に[マンドリンの群れ(マンドリニスト集まれ!等の訳もあり)I Mandolini a congresso]という曲があります。

 この曲の作曲名が楽譜ではC.A.Braccoとのみしか記載されておらず、フルネームがいったい誰なのか100年近くに亘(わた)り論争がつづいておりました。

 このたび同志社大学マンドリンクラブOBの指揮者 辻本篤人氏よりメールをいただきBraccoのフルネームを証明する資料とともに100年来の論争に決着がついたとのご報告を受けこのホームページの修正を依頼されました。

 資料を拝見させていただくと極めて信憑性の高い正確な調査結果であることに感銘を受け、できれば資料ごとこのホームページに掲載させていただけないかとお願いしたところ、快諾をいただきました。
ここに辻本氏のご努力とその調査をされましたマンドリニストCarlo Aonzo氏に対し、改めて敬意を表し厚く御礼もうしあげます。
 
 1.「The Guiter and Mandolin」(Philipp.J.Born 著、記載内容
ギター、マンドリンに関する作曲家の紹介で最も権威のある、信頼性の深い書物、我が国でも多くの愛好家がこの本を引用先として曲目解説yなどに利用しているが、作曲者名にはC.A.Bracco としか調査されてない。死亡年月日も誤りを指摘されてきた。
 2.Ugo Orlandi氏
見解、JMU支持説
 Carlo Albert Bracco
ただし氏より聞き取りによる見解で決定的な資料がない
C:といえばイタリアでは通常Carloを指すものだという根拠の乏しい見解
  3.イタリアの吹奏楽作曲家辞典、「Dizionario della musica italiana per banda」(Marino Anesa 著)   “Carlo Albert Bracco”と記載されているが、参照文献等は併記されていない、また出版されたのが2004 年であることから、Orlandi氏の見解に基づいている可能性が考えられるとの見解
 4.石村隆行氏の発見  石村隆行氏発見によるイルマンドリーノ誌のBraccoの訃報掲載記事
「Il Mandolino (1905.02)」にミドルネームが記載されていた
”C.Adolfo Bracco” との記載からミドルネームはAdolfo で間違いないのではとの見解
この発見は中野先生生前、IlMandolino誌の隅から隅まで読んだつもりでいたが意外な見落としがあったと石村氏の功績を褒めたたえた記事を書いておられたとおもいます。
 5.故松本謙氏の蔵譜使用例  京都のマンドリン楽譜収集家である故松本氏の自らの蔵譜目録には
1987年まではCarlo Alberto Bracco を使用
1993年からはC.Adolfo Bracco に変更
JMU誌には変更の経緯が聞けなかったとあるが、石村氏の発見が中野先生の見解に多大なる影響を与えこれに基づく根拠の影響が強いのではないかと思われる。
 6.今回の100年来論争の
最終かつ完全な決着
 辻本篤人氏の調査でフルネーム「“Calogero Adolfo Bracco”」の決め手となった報告資料。
1.ジェノヴァの市役所のブラッコの死亡証明書。
2.教会に保管されていたブラッコと妻ローザに関する情報が記載されていたリスト。
 中野先生生前からよく書いておられたマンドリン界の謎・ミステリーの一つにこのBraccoのフルネームの解明がうかびあがります。

あくまで当方の思い浮かぶ個人的見解での3大謎・ミステリーですが(これから下は個人見解です聞きながしていただければかまいません)

1.C.Munierの墓はいったいどこに葬られているのか?

2.G.Manenteの作曲した名曲「メリアの平原にて」の「メリア」とはいったいなんぞや? 

3.C.A.Bracciのフルネームはいったい何か? 

が思い浮かびますが
1.2はいずれも20世紀中に同志社MCのOB岡村氏のご努力により氏が自ら現地に渡り解明しましたが3.だけは21世紀に入ってようやく解明されたことになり、感慨深いものがあります。

「マンドリンの群れ」の出版されたのは1902年 日本には1918年にO.S.T(オルケスタ・シンフォニカ タケイ)が第5回の演奏会にて取り上げたとの記録が残っておりますが、爾後100数年ようやく決着がついたことは感無量です。最終的、完全なる、かつ不可逆的決着がついたと思います。どこかの国と交わした条約みたいですが???
この調査をされ、また現地の調査を受け持たれた辻本氏とCarlo Aonzo氏の功績と快挙を改めてたたえたいと思います。