歌劇「マリターナ」序曲
 
ヴインセント・ウォーレス作曲
エンリコ・ボルタ編曲
 
 作曲者はアイルランドに生まれ(1812)、フランスに逝いた(1865)作曲家。
軍楽隊長であった父から学び、家族と共にダブリンに移って、この地でヴァイオリン奏者となる。
1835年以後、オーストラリア、西インド諸島、南アフリカ、メキシコ、アメリカを旅行、時に演奏もし、1845年ロンドンで歌劇「マリターナ」を初演して成功をおさめた。
その後多くの歌劇を作曲、フランス、ドイツで活躍したが、今日「マリターナ」序曲以外は殆んど演奏されない。
(音楽之友社音楽辞典・人名篇)

 三幕のオペラでマリターナはジプシーの歌姫の名。
オペラそのものが上演されないので、詳細が判明しないが第一幕はマドリッド宮廷の情景、第二幕はとりでの中とモンテフィオリ宮殿の一室、第三幕は王宮の部屋と王の庭園となっている(The Victrola book of the Opera)。
登場人物はスペイン王シャルルニ世、サンタレムのドン・ホゼ長老、ドン・カエサル、モンテフィオリ侯爵、マリターナ(ジプシー歌姫)、モンテフィオリ侯爵未亡人、となっている。
 いずれこの序曲もこれらの中の主要なメロディが点綴された(非常に美しく変化に富んでいる)ものに違いないが現段階では究め難い。
 曾て筆者がNHKに在籍して管弦楽でこの序曲を振った覚えがあり、偶々石村君から贈られたものの中にボルタ編曲のこの序曲を見出し、改めて美しさに魅了されたのである。
 編曲者ボルタはイタリア・コモのマンドリン合奏団の主要奏者、ソリストとしても名高い。
モーツァルトのオペラ「ティトーの仁慈」序曲がイル・プレットロ主宰のコンクールに編曲入賞している。
他にも色々あるが本曲もその一つで、自筆のスコアらしいのは未出版のようである。



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