滅びし国 序曲
 
ジュゼッペ・フィリッパ作曲
中野二郎編曲
 
 作曲者ジュゼッペ・フィリッパはイタリア中東部のアドリア海に面した港町、ペサロの国立吹奏楽団の指揮者で作曲家。
残念乍ら未だにその生死年は詳かにしない。
然しその作品は19世紀末までに多量に出版されており、大半吹奏楽曲であるが、時恰もイタリアでマンドリン音楽が開花した時期で、ロマンの薫り豊かな曲が多く本曲もその一つ。
 古今東西を問わず、歴史は栄枯盛衰の繰返し、我々が過去に栄えた国の遺跡に佇む時に憶える感慨・・・・・
遙かな昔、栄華の象徴ともなったイスラエル王ソロモンの夢の跡、杜甫の国破れて山河あり、近くは夏草やつわものどもの夢のあと、歴史は興亡の繰返しで大小様々、到る所に散在する古城や僅かに残るその石垣などに名残りを留めている。
国の存亡には必ず戦いがあり、勝者の栄耀があれば又敗者の悲哀も舐めなければならない。
 曲は最初の緩やかな部分に滅びた詠嘆があり、むしろ戦いによって順調に栄えてゆく回想が主となり曲名から受ける暗さは余りない。
従来マンドリンオーケストラのギターの分担、役わりは主としてリズムを担当するのが常套手段であるが、本曲では大胆に到るところにギターを主役に試みたのでその効果を聴いて頂きたい。
 ギターは元来和音楽器と見做(な)され、特にマンドリン合奏ではその感が深いが、あの指頭で弾くギターの音色は真似のできない魅惑のもので、永年のギターの歴史(独奏の世界)が支えられてきた所以であるが、それをマンドリン合奏に生かせたいのが筆者の念願でもある。



[いる・ぷれっとろ番外編]